
「毛万筋」の江戸小紋。 帯を替えることで、日常の装いから改まった席まで幅広く楽しめます。
着物には、染めの着物から紬まで、素材も着こなしも本当にいろいろあります。
そんな着物の世界で、よく耳にするのが「着物初心者」という言葉です。
私は、あまりこの言葉が好きではありません。
初心者だから、これはまだ早い。
初心者だから、これはまだ無理。
そんなふうに考えるより、たとえ初めて着物をお誂えする方であっても、その方にとって一番役に立つ着物は何だろう、と考えたい。
古い着物や帯を扱いながら、お客様一人ひとりに似合う組み合わせを考えてきた私が、最初のお誂えとしてたどり着いたのが、江戸小紋でした。
遠くから見ると、無地のように見える江戸小紋。
けれど、帯を替えるだけで驚くほど表情が変わります。
大きなお花の帯を合わせれば、華やかに。
金銀の帯を合わせれば、結婚式へ。
そして喪の帯を合わせれば、お通夜や法事にも。
一枚の着物が、合わせる帯によってこれほどいろいろな場面で着られる。
なんて、魔法の着物。
当時40代だった私も、そんな便利な着物があることを、それまで誰からも教えてもらったことがありませんでした。
だからこそ、お客様にはお伝えしたいと思いました。
最初の一枚だからこそ、長く、いろいろな場面で着られるものを。
そして、その江戸小紋を手染めにこだわって作り続けているのが、三田村浩幸さんです。
三田村さんの江戸小紋には、伝統的な染めでありながら、どこかすっきりとした軽やかさがあります。
きちんとした着物でありながら、着る人や帯によって、その人らしい一枚になる。
18年間、三田村さんと仕事を続けてきた今も、江戸小紋はやっぱり素晴らしい着物だと思います。
そして、手染めにこだわった三田村さんの江戸小紋を、oteshioでお客様にお勧めできること。
それは、とても素晴らしいことです。
そして今回の「あいおもい・札幌展」では、岩下江美佳さんの染めとともに、三田村さんの江戸小紋もご覧いただきます。
それぞれの仕事を、実際に手に取り、色や染めの美しさを感じていただけたらと思います。
▶︎ あいおもい・札幌展|岩下江美佳さんの染め、三田村浩幸さんの江戸小紋をご覧いただける展示会のご案内です。

着物 乱菊の地紋に「お召し十」 「お召し十」・・徳川の定め小紋の模様のこと。
三田村さんと仕事をするようになって、18年。
長いお付き合いの中で、ずっと変わらないなと思うことがあります。
それは、目先の利益ではなく、いいものを届けようとする姿勢です。
三田村さんは江戸小紋をつくる人であると同時に、コーディネートをする人でもあります。
お客様がいらっしゃると、その方を見て、着物や帯を選ぶ。
それが、とても早い。
初めてお会いした方なのに、三田村さんがさっと選んだものが、その方に驚くほどよく似合うことがあります。
以前、そのことについて話していた時、三田村さんから聞いたのが、
「ものを選ぶ眼」
という言葉でした。
長く着物を見て、たくさんの人を見てきたからこそ身についたものなのでしょう。
でも私は、それだけではないような気がしています。
三田村さんのコーディネートは、着物から始まるのではなく、「人」から始まる。
この着物が素敵だから、この人に着てもらいたい、ではなく、
この人なら、何が一番素敵に見えるだろう。
そこから選んでいるように思うのです。
着物は不思議です。
同じ一枚でも、着る人によってまったく違って見えることがあります。
だから、ものだけを見ていても、いいコーディネートにはならない。
「人があってのコーディネート」
18年間一緒に仕事をしてきて、私が三田村さんから感じてきたのは、そんなことです。
そしてもう一つ。
三田村さんの着物には、どこかスポーティーな感じがあります。
江戸小紋という、とても細やかで伝統的な染めなのに、堅苦しくない。
すっきりとしていて、着る人が自然に見える。
最初に京都の小物屋さんから、
「上野さんにぴったりの江戸小紋屋さんがいる。同じ体育会系だから」
と言われた意味が、今なら少し分かるような気がします。
着物も、人も。
余計なものを足しすぎず、その人らしく。
18年経った今も、三田村さんと一緒に仕事を続けている理由は、案外そんなところにあるのかもしれません。
▶︎ 三田村浩幸 / artist
三田村浩幸さんの仕事と作品をご紹介しています。
▶︎ あいおもい・札幌展
三田村浩幸さんの江戸小紋をご覧いただける展示会のご案内です。

鱗文様の中に、「鮫」「行儀」「角通し」。
江戸小紋を代表する三つの文様を染め分けた、三田村さんならではの一枚です。
oteshioを始めた頃は、古い着物や帯などを中心に扱っていました。
少しずつお客様が増えていくにつれ、サイズの問題やコーディネートのことなど、古い着物だけでは、私が思うようなご提案が難しいと感じることも増えてきました。
そこで、いろいろと考えました。
もし、お客様が初めて一枚の着物をお誂えするとしたら。
どんな着物が、一番喜んでいただけるだろう。
私なりに考えて、行き着いたのが「江戸小紋」でした。
けれど、その頃の私には江戸小紋とのつながりが、まったくありません。
当時よく通っていたのが、oteshioオリジナルの三分紐や帯揚げをお願いしていた京都の小物屋さんでした。
そこで私は、江戸小紋のことをあれこれ聞いて回っていました。
江戸のものを、京都で聞いて回る。
今思うと、おかしな話ですよね。
そんなことをしているうちに、ある時、
「上野さんにぴったりの江戸小紋屋さんがいるから、紹介したい」
と言われました。
「えー、どこが私にぴったりなんですか?」
そう聞くと、
「同じ体育会系なところ」
という答え。
それが、三田村浩幸さんとの出会いの始まりでした。
初めて三田村さんとお会いしたのは、三田村さんが札幌へ出張にいらした時。
仕事の合間に、当時のoteshioへ立ち寄ってくださいました。
前のお店は古いビルの一室。
床はひび割れたコンクリートがむき出しで、もちろん畳の部屋なんてありません。
そんな場所に江戸小紋屋さんをお迎えしたのです。
後になって三田村さんから、
「あの時は、本当にびっくりした」
と聞きました。
今、あの頃を思い出すと、私の方が冷や汗ものです。
それでも話は早かった。
そこはやっぱり、体育会系同士だったのでしょうか。
「やりましょう」
その一言から、oteshioの江戸小紋展が始まりました。
古い着物や帯から始まったoteshioが、お客様のために初めて「お誂え」を考え、その答えとして選んだ江戸小紋。
そして出会った三田村さん。
体育会系の「やりましょう」から始まったご縁は、気がつけば今年で18年目を迎えます。
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三田村浩幸さんの仕事と作品をご紹介しています。
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▶︎ 岩下江美佳 / blog
岩下江美佳さんの染めと、oteshioでご紹介してきた作品について。



